型の相互変換

PHP は変数宣言時に明示的な型定義を必要としません。 型を定義しない場合、変数の型は保存する値によって決まります。 これは、変数 $var に文字列を代入した場合、 $var の型は文字列 (string) になることを意味しています。 その後、整数値を $var に代入すると、 その変数の型は整数 (int) になります。

コンテクスト(文脈)によっては、 PHP が値を別の型に自動変換しようとすることがあります。 自動変換が行われる異なるコンテクストが存在するのは、以下のとおりです:

  • 数値のコンテクスト
  • 文字列のコンテクスト
  • 論理コンテクスト
  • 整数と文字列のコンテクスト
  • 比較のコンテクスト
  • 関数のコンテクスト

注意: 値を別の型として解釈する必要がある場合でも、 値そのものの型は 変わりません

変数を強制的にある特定の型として評価させたい場合は、 型キャスト のセクションを参照ください。 ある変数の型を変更したい場合は、settype を参照ください。

数値のコンテクスト

これは、 算術演算子 を使った場合です。

このコンテクストでは、 オペランドのどちらかが float (または整数と解釈できない場合) の場合か、 両方のオペランドが float の場合、 結果の型は float になります。 そうでない場合、オペランドは整数として解釈され、 結果の型も整数になります。 PHP 8.0.0 以降では、いずれかのオペランドが解釈できない場合、 TypeError がスローされます。

文字列のコンテクスト

これは、 echo, print文字列中の変数のパース、または 文字列演算子 を使った場合です。

値は文字列として解釈されます。 文字列として解釈できない場合、 TypeError がスローされます。 PHP 7.4.0 より前のバージョンでは、 E_RECOVERABLE_ERROR が発生していました。

論理コンテクスト

これは、 制御構文や 三項演算子, 論理演算子 を使った場合です。

値は論理値 (bool) として解釈されます。

整数と文字列のコンテクスト

これは、 ビット演算子 を使った場合です。

全てのオペランドが文字列の場合、 結果の型も文字列になります。 そうでない場合、 オペランドは整数として解釈され、 結果の型も整数になります。 PHP 8.0.0 以降では、いずれかのオペランドが解釈できない場合、 TypeError がスローされます。

比較のコンテクスト

これは、 比較演算子 を使った場合です。

このコンテクストで発生する型変換については、 さまざまな型の比較表 に説明があります。

関数のコンテクスト

これは、値が型付きの引数、型付きプロパティに渡された場合や、 戻り値の型を宣言している関数から値が返される場合です。

このコンテクストでは、値はその型の値でなければなりません。 これにはふたつ例外があります。 ひとつめは値の型が int で、 宣言されている型が float の場合、 整数が浮動小数点に変換されることです。 ふたつめは型が スカラー型、 または値がスカラー型に変換可能な場合で、 かつ型の自動変換モードが有効な場合(デフォルト)、 スカラー型の値だけが別の変換可能なスカラー型に変換される可能性があることです。 この振る舞いに関する詳細は、以下を参照ください:

警告

内部関数 は、null を自動的にスカラー型に変換します。 この振る舞いは PHP 8.1.0 以降は 推奨されなくなっています

単一の型宣言における、型の自動変換

  • 論理型(bool) が宣言されている場合: 値は bool として解釈されます。
  • 整数型 (int) が宣言されてい場合: int への変換が定義されている場合は、int として解釈されます。たとえば、文字列が 数値形式 である場合です。
  • float が宣言されている場合: float への変換が定義されている場合は、float として解釈されます。たとえば、文字列が 数値形式 である場合です。
  • 文字列 (string) 型として宣言されている場合: 値は文字列として解釈されます。

union 型と型の自動変換

strict_types が有効になっていない場合、 スカラー型の宣言は、限られた暗黙の型変換が行われます。 値の正確な型が union の一部に指定されていない場合、 次の順に対象となる型が選択されます:

  1. int
  2. float
  3. string
  4. bool
正確な型が union の中に存在し、 かつ値が PHP の既存の型チェックのセマンティクスによって型変換できる場合、 その型が選択されます。 そうでない場合、次の型を試そうとします。

警告

例外として、値が文字列で、int と float が union に含まれていた場合、 型は既存の 数値形式の文字列 を解釈するセマンティクスによって決まります。 たとえば、"42" の場合、 int が選ばれますし、 "42.0" の場合、float が選ばれます。

注意:

上のリストに入っていない型については、 暗黙の型変換が行われる対象ではありません。 特に、暗黙のうちに null, false, true に変換されることはありません。

例1 union の型のひとつに変換される例

<?php
// int|string
42    --> 42          // 正確に型が一致
"42"  --> "42"        // 正確に型が一致
new ObjectWithToString --> "Result of __toString()"
                      // オブジェクトは int と互換性がないので、文字列にフォールバック
42.0  --> 42          // float は int と互換性がある
42.1  --> 42          // float は int と互換性がある
1e100 --> "1.0E+100"  // int には大きすぎる float なので、文字列にフォールバック
INF   --> "INF"       // int には大きすぎる float なので、文字列にフォールバック
true  --> 1           // bool は int と互換性がある
[]    --> TypeError   // 配列はint, string と互換性はない。
// int|float|bool
"45"    --> 45        // int の数値形式の文字列
"45.0"  --> 45.0      // float の数値形式の文字列
"45X"   --> true      // 数値形式の文字列ではない。boolにフォールバック
""      --> false     // 数値形式の文字列ではない。boolにフォールバック
"X"     --> true      // 数値形式の文字列ではない。boolにフォールバック
[]      --> TypeError // 配列はint, float, bool と互換性はない。
?>

型キャスト

型キャストは、変換しようとする型の名前を括弧で括り、 キャストする変数の前に置くことで、値を別の型に変換するものです。

<?php
$foo = 10;   // $foo は整数です
$bar = (bool) $foo;   // $bar は boolean です
?>

使用可能なキャストを以下に示します:

  • (int) - 整数(int) へのキャスト
  • (bool) - 論理値(bool) へのキャスト
  • (float) - float へのキャスト
  • (string) - 文字列(string) へのキャスト
  • (array) - 配列(array) へのキャスト
  • (object) - オブジェクト(object) へのキャスト
  • (unset) - NULL へのキャスト

注意:

(integer) は、(int) のエイリアスです。 (boolean) は、(bool) のエイリアスです。 (binary) は、(string) のエイリアスです。 (double)(real) は、(float) のエイリアスです。 これらのキャストは、正規化された型の名前を使っていません。そのため使うこと自体がおすすめできません。

警告

キャストのエイリアス (real) を使うことは、PHP 8.0.0 以降は推奨されなくなっています。

警告

(unset) によるキャストは、 PHP 7.2.0 以降推奨されなくなりました。 (unset) によるキャストは、 値に NULL 値を代入することと同じです。 (unset) によるキャストは、PHP 8.0.0 で削除されました。

警告

将来サポートされることを見越して、(binary) によるキャストと b プレフィックスが存在しています。 (binary)(string) は現状は等価ですが、将来変更される可能性があります。そのため、現状等価であることに依存すべきではありません。

注意:

キャストの括弧内のホワイトスペースは無視されます。 よって、以下のふたつのキャストは等価です:

<?php
$foo = (int) $bar;
$foo = ( int ) $bar;
?>

以下の例は、リテラル文字列や変数を、バイナリ文字列にキャストします:

<?php
$binary = (binary) $string;
$binary = b"binary string";
?>

注意: ある変数を文字列にキャストする代わりに、 二重引用符で括ることもできます。

<?php
$foo = 10;            // $foo は整数です
$str = "$foo";        // $str は文字列です
$fst = (string) $foo; // $fst も文字列です

// これは、"they are the same"を出力します
if ($fst === $str) {
    echo "they are the same";
}
?>

型の間でキャストを行う際の動作は、必ずしも明確ではありません。 詳細については、以下の節を参照ください:

注意: PHP では配列の添字と同じ構文を使用した文字列へのアクセスをサポートしているので、次の例はあらゆるバージョンの PHP で成立します:

<?php
$a    = 'car'; // $a は文字列です
$a[0] = 'b';   // $a はここでも文字列です
echo $a;       // bar
?>
詳細は、 文字列への文字単位のアクセス を参照ください。