数値や文字列リテラルと定数を、これまでのバージョンでは静的な値が想定されていた場面 (定数やプロパティの宣言、関数のデフォルト引数など) で、スカラー式として扱えるようになりました。
<?phpconst ONE = 1;const TWO = ONE * 2;class C { const THREE = TWO + 1; const ONE_THIRD = ONE / self::THREE; const SENTENCE = 'THREE の値は '.self::THREE; public function f($a = ONE + self::THREE) { return $a; }}echo (new C)->f()."\n";echo C::SENTENCE;?>
上の例の出力は以下となります。
4 THREE の値は 3
配列も、 const キーワードで定数として定義できるようになりました。
const
<?phpconst ARR = ['a', 'b'];echo ARR[0];?>
a
...
可変個引数の関数 の実装に ... 演算子が使えるようになり、 func_get_args を使わずに済むようになりました。
<?phpfunction f($req, $opt = null, ...$params) { // $params は配列で、残りのすべての引数が含まれます printf('$req: %d; $opt: %d; パラメータ数: %d'."\n", $req, $opt, count($params));}f(1);f(1, 2);f(1, 2, 3);f(1, 2, 3, 4);f(1, 2, 3, 4, 5);?>
$req: 1; $opt: 0; パラメータ数: 0 $req: 1; $opt: 2; パラメータ数: 0 $req: 1; $opt: 2; パラメータ数: 1 $req: 1; $opt: 2; パラメータ数: 2 $req: 1; $opt: 2; パラメータ数: 3
配列 や Traversable オブジェクトを引数リストにアンパックするために、 関数の呼び出し時に ... 演算子が使えるようになりました。 これは、Ruby などの他の言語では splat 演算子と呼ばれることもあります。
<?phpfunction add($a, $b, $c) { return $a + $b + $c;}$operators = [2, 3];echo add(1, ...$operators);?>
6
**
右から評価する ** 演算子が追加されました。 これは累乗をサポートするものです。さらに、短縮代入演算子 **= も追加されました。
**=
<?phpprintf("2 ** 3 == %d\n", 2 ** 3);printf("2 ** 3 ** 2 == %d\n", 2 ** 3 ** 2);$a = 2;$a **= 3;printf("a == %d\n", $a);?>
2 ** 3 == 8 2 ** 3 ** 2 == 512 a == 8
use function
use const
The use 演算子を拡張し、クラスだけではなく関数や定数もインポートできるようになりました。 それぞれ、言語構造 use function および use const を用います。
use
<?phpnamespace Name\Space { const FOO = 42; function f() { echo __FUNCTION__."\n"; }}namespace { use const Name\Space\FOO; use function Name\Space\f; echo FOO."\n"; f();}?>
42 Name\Space\f
PHP は、今や SAPI モジュールとして実装された phpdbg という対話型デバッガーを含みます。 詳細な情報は » phpdbg のドキュメント を参照ください。
エンコーディングに依存する関数 htmlentities や html_entity_decode そして htmlspecialchars におけるデフォルトの文字セットとして、 default_charset を利用するようになりました。 iconv (非推奨) や mbstring でのエンコードが設定されている場合は、 default_charset よりもそちらのほうが優先されます。
この設定のデフォルト値は UTF-8 です。
UTF-8
php://input
php://input が再オープンできるようになり、必要に応じて何度でも読めるようになりました。 その結果として、POST されたデータを読むときに必要となるメモリの量が大幅に削減されました。
2 ギガバイトより大きいサイズのファイルもアップロードできるようになりました。
GMP オブジェクトが、 演算子のオーバーロードやスカラー型へのキャストに対応するようになりました。 GMP を使って、よりわかりやすいコードが書けるようになります。
<?php$a = gmp_init(42);$b = gmp_init(17);if (version_compare(PHP_VERSION, '5.6', '<')) { echo gmp_intval(gmp_add($a, $b)), PHP_EOL; echo gmp_intval(gmp_add($a, 17)), PHP_EOL; echo gmp_intval(gmp_add(42, $b)), PHP_EOL;} else { echo $a + $b, PHP_EOL; echo $a + 17, PHP_EOL; echo 42 + $b, PHP_EOL;}?>
59 59 59
hash_equals 関数が追加されました。 この関数は、二つの文字列の比較を一定の時間で行います。 タイミング攻撃を防ぐために、文字列の比較にはこの関数を使うべきです。 たとえば crypt のパスワードハッシュをチェックしたりするときに使えます (password_hash や password_verify が使えない場合を想定。 これらの関数は、タイミング攻撃の影響を受けません)。
<?php$expected = crypt('12345', '$2a$07$usesomesillystringforsalt$');$correct = crypt('12345', '$2a$07$usesomesillystringforsalt$');$incorrect = crypt('1234', '$2a$07$usesomesillystringforsalt$');var_dump(hash_equals($expected, $correct));var_dump(hash_equals($expected, $incorrect));?>
bool(true) bool(false)
__debugInfo()
マジックメソッド __debugInfo() が追加されました。 var_dump でオブジェクトの情報を出力する際の、 プロパティやその値の表示方法を変更できます。
<?phpclass C { private $prop; public function __construct($val) { $this->prop = $val; } public function __debugInfo() { return [ 'propSquared' => $this->prop ** 2, ]; }}var_dump(new C(42));?>
object(C)#1 (1) { ["propSquared"]=> int(1764) }
ハッシュアルゴリズム gost-crypto が追加されました。 これは GOST ハッシュ関数を実装したもので、 » RFC 4357, section 11.2 に記載されている CryptoPro S-box テーブルを使っています。
gost-crypto
PHP 5.6 では、SSL/TLS のサポートに幅広い改良が加わりました。 ピア検証にデフォルトで対応したり、 証明書のフィンガープリントのマッチングに対応したり、 TLS 再ネゴシエーションアタックの対策をしたり、多数の SSL コンテキストオプションを新たに導入したりしました。 これらによって、暗号化されたストリームに関するよりきめ細やかな制御ができるようになりました。
変更内容の詳細を、 PHP 5.6.x における OpenSSL 関連の変更 にまとめました。
pgsql 拡張モジュールが、 非同期の接続や問い合わせに対応しました。 PostgreSQL データベースとのやりとりで、ノンブロッキング処理ができるようになります。 非同期接続を確立するには、定数 PGSQL_CONNECT_ASYNC を利用します。そして、新しい関数 pg_connect_poll、pg_socket、 pg_consume_input、pg_flush を使って、非同期接続や問い合わせを処理します。
PGSQL_CONNECT_ASYNC